重岡くんが幼馴染だったら、こんな新入社員親睦会に参加したい
4月。新入社員だけで親睦会をしよう、と目立つ男勢が言い始め、中でもそのグループの中心となっている彼が幹事に推薦された。らしい。
幼馴染である重岡大毅は、周りの盛り上がりにただ賛同していただけなのに、「お前が企画すれば女の子たちも集まるだろう!」と言われ、半ば強制的に幹事にされたと隣でボヤいている。
「や〜〜シゲちゃん人気者で困るわ〜〜(笑)」
「はいはい、よかったね(笑)がんばってよ。」
「あ゛ァ〜〜!!しょーみ面倒やわ」
「どんまい(笑)」
と、帰りの電車で言っていたのが一週間前のことである。そう言いながらも、一次会は少し席替えしながら自己紹介タイムとか企画したりして、大盛り上がりだった。
二次会は行きたい人だけが行くスタイルだったけど、ほぼほぼ全員が来るという事態。大毅が幹事だからなのかは正直分からないけど、まあ今度褒めてやってもいいかな、とか。
そんな二次会の立ち飲みも終盤。ほろ酔いですごく気分がいい。自分のグラスがなくなったので、カウンターへ頼みに行く。梅酒のロック、と言いかけてソーダ割に変更する。ここら辺で少しセーブしとかないとな。
ソーダ割りです、と渡されたところで話しかけられる。たしか大毅とすごく意気投合してた、隣の課の東京ボーイ。あんまり話したこともなかったから、ちょうどよかった。
中島健人と名乗る彼は、少女漫画から出てきたのかと錯覚するような、「絵に描いたようなイケメン」である。これは同期女子のみならず、先輩も放っておかないんだろうな、と思う。とっても人懐っこくて、彼が去年飼い始めた愛犬の話で盛り上がる。
へ〜これめっちゃ可愛いじゃん、と突然彼が自分の頬骨のあたりを指差すから、( あれ、チークつけすぎたかな。 )と少し頬をこする。「いや、違うよ(笑)コッチ。」健人くんが私の耳に触れて、あ、ピアスのことか、と分かる。
「あ〜友達にもらったんだ〜」と言ってみたものの、本当はこの揺れるピアス、大毅が去年の誕生日にくれたものだ。何の用だったか忘れたけれど、ショッピングモールを2人でぶらぶらしていた時に、可愛い!と私が言っていた事を覚えていたらしく、プレゼントしてくれたのだ。
彼と幼馴染という事はいずれ知られる事だけど、勘違いされても面倒だしな〜と思って、いらない嘘をつく。おととい大毅が私の家に来た時に「スーツにも合うし、親睦会つけてったらええんちゃう?」と、アクセサリースタンドを見ながら言っていた事を、今朝思い出したのだ。
「友達か〜〜、もしかして彼氏だったりするの?」とか聞いてくるし、チェーンで繋がっているピアスの赤いストーンの部分をくるくると興味深そうに触っているから、顔が熱くなってきていることに気づく。やばいな、このままだと、なんか色々とバレそう。
「セクハラに間違われる事はやめとき、こんなヤツでも一応オンナやねん、健人」
「おっシゲじゃん」
「コレ。俺があげてん。たまにご機嫌とっとかんと、拗ねるからなコイツ(笑)」
あ、言っちゃった。てか色々とツッコミどころあるけどなんなの、健人くんに変な印象あたえるからやめてよ。
しかも、やっぱりな〜、って健人くんがニヤニヤして交互に私達を見てくるけど、なにがやっぱりなのかさっぱり分からない。
「オイ、会計手伝え。」
「え〜〜もうちょっとボニータちゃんのお話聞きたかったのに〜〜」
「なんの話やねん、ちょおコイツ借りるわ」
スーツの袖を引っ張られるから仕方なく、また今度詳しく聞かせてね!と言うと健人くんが「飼い主変えたくなったらいつでもどーぞ」って口角あげてヒラヒラ手を振るから、え、飼い主の話じゃなくて健人くんの愛犬の話なんだけどな、聞きたいのは、って思う。
みんなから少し離れたテーブルで、集めた札束を2人で数える。なかなかの大人数が集まったものだから、間違えのないよう丁寧に。
「お前さ」
「なに」
「コッチ見んでええから、手ェとめんな」
「…なに。」
「んな簡単に触られんな」
「え?」
「やから手ェとめんなって」
「んー」
「…。」
「よし!数え終わった!」
「いくら?」
無事数字も合っていて、大毅が声をかけてみんながゾロゾロと店を出る。彼曰く「全員が駅のほうへ向かうのを見届けるまでが幹事の仕事」らしいので、お店の前を出たのは、一本締めをしてから20分をすぎた頃だった。
走ってなんとかギリギリ乗ることができた最終電車は、少し遅延していたみたいで仕事帰りの人と大学生でいっぱい。
「んあ゛ーーーー疲れた!!」
「ほんと、おつかれさま(笑)」
「もう絶対やらん」
「でももう本当に社会人なんだね」
「せやな〜」
ハタチになった時は"やっとオトナになれた"と思ったはずなのに、社会人となった今は"大人になってしまった"と感じる。もう学生の時のような馬鹿騒ぎはできないのかもしれない、と新歓帰りらしき大学生を見ながらふと思う。
隣で、吊革の上の棒を掴んで立っている大毅のスーツ姿も、就活生だった時のソレ、とは違って心なしか大人の男のソレ、に変わっているように見えた。
最寄駅から家までの道のりを彼と歩くのは、もう何回目だろう。街灯の明かりに負けないくらい、満月が夜道を照らしている。
「なんで友達って言うたん?」
「ん?」
「健人に。ピアスの」
「あ〜、や、なんか勘違いされたら面倒だなって」
「ふーん」
「そういや大毅が言うからコレつけたんだよ!たしかにスーツに合うかも、健人くんにも褒められたし!」
「おー」
「ちょっとなにその反応ー!つまんなー」
「ほんなら毎日つけたらえーやん」
「毎日?(笑)」
「今度から俺にもらったて言えよ、」
「うん?」
「…俺がええセンスしとるて分かるやん(笑)」
「なにそれ(笑)」
「ええから、つけとけよ」
…こんな感じに、遠回しの気持ちがなかなか届かない重岡くん推しです。
男避けになるかな〜〜と考えてピアス付けてけって言ったのに、「友達からもらった」って誤魔化されるし「勘違いされたら面倒」とまで言われてしまう、みたいな。笑
そしてSexy zoneから、中島健人くん(とボニータちゃん)に友情出演してもらいました。主人公ちゃんは、まだ健人くんは自分たちが幼馴染って知らないと思ってたけど、ちゃっかりシゲが昔から知ってるアピールを周りの人にしていて、その話し方から健人くんは気持ちを察してるから少しからかいたくなった、的な設定。笑
この後はちょっとムシャクシャした重岡くんに、バッセンへ連行させられるんだと思いますので、飲み会後も体力を残しておきましょう。