小瀧くんが近所に住む弟くんだったら、こんな再会をしたい
たった1年離れただけのはずだった。それは、長いようで短い。なのに彼は、私が弟のように可愛がっていた望くんとは別の、"大人の男の人"になっていた。タイムスリップをして、うんと未来に来てしまったのではないか?なんてことを一瞬、考えてしまったくらいである。
待ちに待った、帰省。一週間も休みがとれて、久々に羽を休めることができる。
地方での就職が決まり、そこからは忙しい日々に追われ、地元へ帰ってくるのは実に1年ぶりであった。つまり望くんと会うのも、1年ぶりということだ。
実家の近所に住む3つ下の彼のことは、生まれた時から知っている。懐いてくれるのは嬉しいけれど、中学、高校にあがってからも心配になるくらい私についてまわっていた彼。背はとっくのとうに抜かされてしまったものの、私にとってはずっと、弟の様な存在である。
帰省の日程が決まり、望くんに電話をすると、
『オレ、迎えに行ってもええ?!』
「来てくれるの?」
『新幹線の切符とったら教えてな!その時間につけるようにするから!』
「電車の最寄駅まででいいよ、新幹線の駅だと遠いし、結構高いじゃん(笑)」
『ええの!ずっとしてみたかってん、ドライブデート!』
「あっ、そっか!車の、免許とったんだもんね!」
『そうそう!やっと乗せられる〜〜!』
そんなやりとりもあって、新幹線の駅に車で迎えにきてくれるらしい。
私が実家を出てから何度もコチラに遊びに来たい、と言ってくれていたけれどタイミングが合わなかったし、SNSも社会人になったタイミングでやめてしまい、本当に久しぶりに顔を見ることが出来る。
ようやく駅につき、メッセージをする。
「着いたよ!」
「いまどこ?」
小瀧望 : 西口やんな?
小瀧望 : もう改札おるよー😄!
ケータイを片手に、もういるはずの彼をキョロキョロと探す。すると、「み〜っけ♡」という声と共に、後ろから腕を回された。
振りかえると「会いたかった〜〜!」と言いながら、片方の手で私のキャスターを持ってくれる……長髪の、大人な、望くんがいた。
「今日に限ってめっちゃ渋滞しとってさ〜〜!ホンマに焦ったわ〜〜!」
そうやって笑う彼は、昔から弟のように可愛がっていた、頬っぺたが丸くて背が高いのに幼く笑う望くんとは、別人のようだった。つい、唖然としてしまう。
「ほな、行こっか!」
「…。」
「ちょっと〜!楽しみにてたん、俺だけ?!長旅やったから、疲れた?」
「えっ、や、楽しみにしてたよ、それに、疲れてないよ」
「え〜〜ほんなら何?!なんかついてる?」
「ううん、望くん、変わったなって思って」
「あ〜〜そうやな、髪切るタイミング逃してん。めっちゃ伸びとるよな(笑)」
「いや、それだけじゃなくて、なんか、大人になったね」
「え!ホンマに?!」
「うん」
これで○○ちゃんに追いつけたかな〜〜♡とニコニコ笑い、歩き出す。いや、追いつけた、というより、寧ろ追い抜かされたくらいだ。たった1年離れただけでこんなにも変わるなんて。そこら辺の大学生よりもずっと大人びていて、私の知っているどの男性よりも…かっこいい。
「え、いま20歳だよね?」
「ちょ、ひどない?!ワインのプレゼント、送ってくれたやんか!これで大人の仲間入りやね、って!」
「うん、そうだけどさ」
「ふは、やっと俺と付き合ってもええかなって思えた?」
まったく。この類の冗談を言ってくるところは、昔から変わらないままだ。
…冗談、もとい本気、だったらしい。今はどうだか知らないけれど。前に一度、いつものように呆れていたら、突然告白されたことがある。「俺、本気やから。」…その顔は、真剣な時にしかしないと知っているだけに、あの時だけは茶化せず黙り込むことしか出来なかった。
結局、当時わたしに彼氏がいた事もあり、有耶無耶のままになってしまっていた。
こんな事、他の子にも言ってるのかな。これじゃあみんな、望くんのこと、好きになっちゃうじゃんか。
「なあ、俺、居酒屋行きたい!乾杯したい!」
「いいね、私もしたい!」
「あんな、俺な、たっくさん考えてん!○○ちゃんと行きたいとこ!」
「そうなの(笑)?」
そ!オクフェスやろ〜、あの青い花の花畑やろ〜、あとな!…次々に魅力的な場所をあげてくれる。順調に大学生ライフを歩んでいるんだな、としみじみする。
「サークルのお友達とそういう所行ったりするの?」
「そうやね〜、新歓時期やったからさ、後輩いっぱい連れてった!」
「そっか、もうそんな先輩やってるんだね〜〜」
「あ、妬いた!?なあなあ、いま妬いた!?」
笑顔で顔を覗き込むから、妬いてないよ、と言うと「まっ、安心してええで!2人で行きたいところは全部とっといてんねん。」ってドヤ顔で手を繋いでくるし、会話が成立していない。
「ていうか!手!もう終わりって言ってるよね?!」
「ええの!久しぶりやし!」
「も〜〜見られて困る人くらいいるんでしょ?」
「そんなんおらんし。俺、ずっと○○ちゃん一筋やもん。」
望くんが中学に入学すると同時に、手を繋ぐのは止めようと言った。それでも事あるごとに繋いでくるのを、注意しつつも可愛くて許してしまう自分がいた。
…でも。今日は。許してしまうのが怖い。薄手のトレンチコートを着た彼は、余計にスラっとして見えて、いつもと同じ"冗談"のはずが、つい、勘違いしてしまいそうになる。
「え〜〜なんか言い返してや〜〜そんな反応されたら、良い意味で捉えてまうやんか〜〜!」って、握った手を揺らす。
「っま、あと1週間あるしな。」
「え?」
「向こう戻るまでの1週間、チャンスが欲しいねん。俺、頑張るから。」
「ちょっと待って、どういうこと?」
「寂しいけど、遠距離でもええよ。」
「望く、」
「分かってるやろ?」
私の言葉を遮るその一言は、彼が本気である時にしか見せない、あの時と同じものだった。手をギュっと強く握る彼に抱くこの感情は、一年前と違うものなのか。認めるにはまだ早い気がした。
だってさあ。
だってさあ!
こんな大人になってしまったのんちゃんを見たらさあ!弟の様に可愛がってた子なのに、再会したら色気ムンムンな大学生に進化しててドギマギ!!みたいなシチュエーション欲しいじゃん!!んで、恋に落ちたいと思うじゃん!!!!!(頭はお花畑)
この子が…
こうなるんだよ?!
この子が…
こうなるんだよ?!
この子が…
こうなるんだよ?!
(何度だって言います。)
いまあげた比較画像は、1年以上前のもあるけど、半年でもかなり大人びたよね?!
私、男の人の長髪は好きじゃないんだけど(かの、すばる様も短髪派)(どうも、非国民です)、望のは初めて良いと思った。というか、こっちのが好き、!!
もちろん、"まんまるほっぺた"ののんちゃんを愛でたいと思うけれど、この色気推しです。
さて、この妄想の後ですが、「分かってるやろ?」の後の第一声は、「あ〜腹減った!最近この近くに美味いラーメン屋できてん!そこ行こ!」です。(こだわり)
再会したばっかだし。急に話を逸らして、ハッキリ言わず、ドキドキさせておくんです。帰省中、色々と連れ回してくれて"好き"と認めざるを得なくさせます(言い方)。そして一週間後、新幹線の駅まで送り届ける前に海へ連れてってくれて、そこでちゃんとした告白をしてくれます。スキ。
あと実際は、
①望はどんなに忙しくても隙間を見つけて会いに来てくれそうだし、
②女の子がInstagramやTwitterやめてても、LINEで自撮り写真を送ってくるので、
"一年間全く顔を見ない"ってことはあり得なそう。てかあり得ない。(断言)
ま、そこは妄想なので!(ひらきなおり)都合よくいかせて頂きました!!